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『デモナータ 1 ロード・ロス』

『デモナータ 1 ロード・ロス』ダレン・シャンデモナータ 1 ロード・ロスLord Loss)』。
ダレン・シャン作「デモナータThe Demonata)」シリーズ第1巻です(橋本恵訳)。

主人公はグルービッチ・グレイディ(グレブス)少年。中学生くらいでしょうか(?)。年齢のわりには大柄。赤毛。友人たちに対する見栄でタバコを吸って、それが見つかり、大目玉を食らうような普通の男の子です。ただし、(告げ口をした)姉グレテルダへの復讐に「くさりはじめたネズミの死骸」を使うような、ちょっと常軌を逸した部分もあります。

大のチェス好きの両親と姉、それにグルービッチ(グレブス)の4人家族は平穏に幸せに過ごしていました。しかし、両親と姉の3人が自分には黙って何かを実行しようとしていることにグレブスは気づきます。両親の勧めに従って「ケイトおばさん」の家に一人泊まる振りをした彼はひそかに自宅に戻ります。

家のドアを開けたグレブスを待っていたのは「地獄」でした。「魔将」のロード・ロスと部下の悪魔アーテリーとベインが、両親と姉を虐殺していたのです。悪魔たちはグレブスも殺そうとしますが、彼は自分でも知らなかった不思議な力(魔力)を発揮して窮地を脱します。

しかし、両親と姉を惨殺されたグレブスは精神のバランスを決定的に崩してしまいます。精神病院に入院しての長い闘病。グレブスは過酷な現実に背を向け、どうやら生存を続けますが、病気は一向に良くなりません。が、ある日、叔父(父親の弟)であるダービッシュ・グレイディの見舞いを受けたことから、回復への道が開けます。

精神病院から退院したグレブスはダービッシュ叔父の屋敷(大豪邸)に住むことになります。そしてダービッシュを「実の父親」と信じるビルE・スプリーン(ビリー・スプリーン)少年やセクシーな美女ミーラ・フレームとも親交を深めてゆくのですが、家族を殺した悪魔たちのことは忘れられません。そして、新たな「謎」がグレブスの生活に暗い影をもたらします・・・。

若き天才ホラー作家ダレン・シャンのシリーズ作品は巻が進むにつれて面白さも増す傾向があります。と言っても第1巻が詰まらないというわけではありません。シリーズの最初から相当なレベルの面白さなのですが、その面白さが更にアップしてゆくのです。「デモナータ」シリーズにも同じことが言えます。

作者ダレン・シャンによると「デモナータ」シリーズは8~9巻となるようです。主人公は3人。1・3・5巻の主人公のグルービッチ・グレイディ。第2巻のコーネリアス・フレック。第4巻のべック。それぞれ違う時代に暮らす、まったくつながりがないように見える少年少女の物語がどう統一されていゆくのか? はたして話はちゃんとまとまるのか? 物語の展開が楽しみです。


(『デモナータ 1 ロード・ロス』ダレン・シャン、小学館、2006)

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『デモナータ 2 悪魔の盗人』

『デモナータ 2 悪魔の盗人』ダレン・シャンデモナータ 2 悪魔の盗人Demon Thief)』。
ダレン・シャン作「デモナータThe Demonata)」シリーズ第2作です(橋本恵訳)。

主人公は第1作とは変わって、コーネリアス・フレック少年(通称カーネル)。「宙を動く、色とりどりの奇妙な光」が見えるため、同級生など周囲の人たちからは「いかれている」「変人」と見なされています。そのため、カーネルには友達がいません。いつも独りぼっちです。また、彼には生まれつき髪の毛がありません。

あるとき、カーネルは不思議な光の中から怪物(悪魔)が出現するのを目撃してしまいます。そして、気を失います。カーネルがふたたび意識を取り戻すと大騒ぎになっていました。彼は数日間行方不明状態になっていたのです。行方不明になっていた間の記憶をカーネルは失っていました。

その後、カーネルにもよく分からない事情でフレック一家は「夜逃げ」同然の有様で急に引っ越しをすることになります。父親のカスピアン(絵描き)、母親のメレーナ(大学講師)、まだ赤ん坊の弟アート、カーネルの4人はこれまで住んでいた都会を脱出し、パスキンスンという小さな村に落ち着きます。ここは工芸家・芸術家の村でした。

以前、通っていた都会の学校と違って、パスキンスンの村の子供たちはカーネルをことさらに差別するようなことはありませんでした(光が見えることを口外しなかったからでもありますが)。カーネルは村の生活に馴染んでいきます。何をするにも幼い弟のアートがいつも一緒です。カーネルは弟を心から愛していました。

ところが、平穏な生活に陰が差し始めます。「魔女」というあだ名のミス・イギン、村の誰とも付き合わず孤立した生活を送っている女性が、カーネルとアートを脅すような言動を取り始めたのです。そして、もしカーネルが誰かほかの者にいいつけたら、喉を耳から耳まで切り裂いてやると脅迫します。

ある日、破局がやってきました。村の子供たちが屋外授業をしているとき、ミス・イギンがやってきて、大きな声で怒鳴り始めます。そして、なんと身体が破裂して死んでしまいます。

ミス・イギンが死んだ場所には縦2メートル横1メートルの地上50~60センチに浮かぶ「大きい灰色の光のパネル」が出現します。これは悪魔の世界と人間の世界をつなぐ「まど」でした。カーネルは嫌な予感がして皆に逃げるように告げましたが、すでに手遅れでした。「まど」からは悪魔カダパーが出現し、先生や生徒たちを手当たり次第に殺し始めます。

カーネルは幼い弟を連れて逃げようとしましたが、悪魔に弟を攫われてしまいます。一瞬、迷った彼ですが、悪魔を追って「まど」に飛び込みます。「まど」の向こうは悪魔の世界「デモナータ」でした。これよりカーネルの悪夢のような追跡行が始まります・・・。

と、今回は思わずストーリー紹介が長くなってしまいました(笑)。
物語は、コーネリアス・フレック少年(カーネル)が弟のアートを救出するというシンプルな構成です。が、なかなか凝ったミステリが仕組まれています。「ああ、なるほど! そうだったんだ!」という「種明かし」が複数回ありました。私(喜八)はこういうのは好きですね。

カーネルとともに戦う「魔術同盟」のメンバーの中に、ダービッシュ・グレイディがいます。第1作と第3作にもグレブス少年の叔父として登場するダービッシュです。ただ、この第2作『デモナータ 2 悪魔の盗人』ではパンク風のみなりをした若い男となっています。「デモナータ」の「1」と「2」では20年ほど時代が異なっているようです。

なんと言っても、続きを読むのが待ち遠しいシリーズです。つい最近、原語(英語)版の第5巻『Blood Beast』が出版されました。1・3巻とおなじくグルービッチ・グレイディ(グレブス)とダービッシュ叔父が主人公です。日本語翻訳版が早くでないかものかと楽しみにしています。

(『デモナータ 2 悪魔の盗人』ダレン・シャン、小学館、2006)

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『デモナータ 3 スローター』

『デモナータ 3 スローター』ダレン・シャン若き天才ホラー小説家ダレン・シャンによる「デモナータThe Demonata)」シリーズ第3作『デモナータ 3 スローターSlawter)』の翻訳です(橋本恵訳)。

作家ダレン・シャンといえば、自分と同名の少年ヴァンパイアを主人公とした「ダレン・シャン・サーガ(全12巻)」で世界的大ヒットを飛ばした後も、その創作意欲は衰えることがなく「デモナータ」も快調に出版され続けています。

子供向けに書かれた「ダレン・シャン」のことはまったく知らなかったのですが、知人に勧められて第1巻『奇怪なサーカス』を読んでみたら、「なかなかイケル」。それで2巻目以降も読み進めると、巻を追うごとに面白さが増してゆく。「これはかなりの才能だ!」と驚かされました。全12巻を読み終わったときは非常な満足感を覚えたのです。

そして「デモナータ」シリーズ。こちらも「ダレン・シャン」をさらにパワーアップしたような面白さです。これはもう「子供向けホラー」とは言えないかもしれません。

現在「デモナータ」シリーズは原作・翻訳ともに第4巻まで出版されています。そして第5巻「Blood Beast」は2007年の06月06日に出版される予定です。シリーズの奇数巻、つまり1・3・5巻の主人公は現代に生きる少年グルービッチ・グレイディ。第2巻の主人公は20年ほどさかのぼった時代の少年コーネリアス・フレック。第4巻は5世紀のアイルランドに住む少女ベックという、ちょっと凝った構成になっています。

主人公たちの共通の「敵」は強大な力を持つ悪魔のロード・ロス。人間を激しく憎んでいて、人間を残虐にいたぶって殺すのが何よりの楽しみだという「魔将」です。そして、ロード・ロスとその配下の悪魔どもが暮らしているのが魔界「デモナータ」なのです。

悪魔たちは基本的に人間界に来ることが難しいのですが、人間の中に協力者を得ることで「デモナータ」と人間界のあいだに「まど」を開くことができます。そうやって到来した悪魔の目的はもちろん人間を虐殺することです。「デモナータ」シリーズの主人公たちは、本人がまったく望んでいないにもかかわらず、悪魔たちと戦わざるを得ない運命に陥ってしまいます。

この第3作『デモナータ 3 スローター』では、主人公のグラブス少年と叔父のダービッシュ、異母弟のビルE・スプリーンの3人が、、ホラー映画『スローター』のロケ現場に赴きます。当初は普通の撮影現場だと思ったところ、グラブスは徐々に怪しい点に気づいていき・・・というストーリーです。そして物語のクライマックスでは悪魔軍団と人間たちの壮絶な戦いが繰り広げられます。

ホラー・ファンの私としては「う~ん、満足だ」という出来栄えでした。ただし、残虐描写などは前シリーズより更に過激になっています。そのためスプラッタが苦手な方には到底お勧めできない一冊でもあります。ちなみに『スローター』とは「大虐殺」という意味です・・・。


(『デモナータ 3 スローター』ダレン・シャン、小学館、2006)


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『夜の記憶』

『夜の記憶』トマス・H・クックロシア語同時通訳者であり作家であった米原万里さん(1950-2006)の書評集『打ちのめされるようなすごい本』文藝春秋(2006)で激賞されていたのが、本書『夜の記憶』です。

米国のミステリ作家トマス・H・クックによる『夜の記憶』は、たしかに「打ちのめされるようなすごい」小説でした。そして、米原万里さんが保証されているように、非常に怖い本でもあります。恐怖への耐性が弱い方(怖がりの方)にはお勧めできかねる「暗黒ミステリ」とも言えるでしょう。

主人公は45歳の独身男性ポール・グレーヴズ。彼の職業は「ミステリ作家」です。彼がこれまで書いてきた15編の長編小説には常に同じ者たちが登場します。残虐きわまる犯罪常習者「ケスラー」。その手先の「サイクス」。そして彼らを追う警官「スロヴァック」。

ケスラーは被害者を嬲《なぶ》り殺しにすることに至上の喜びを感じるような本物の人殺しですが、自分の手を汚すようなことはしません。彼の部下(奴隷)である、臆病な小男サイクスに命じて拷問・虐殺を行なわせるのです。

スロヴァック刑事は正義感に燃える優秀な警察官ですが、ケスラー・サイクスとの闘いにおいては敗北につぐ敗北を重ねています。悪と善の戦いは20年以上にわたって続けられ、このごろではスロヴァックは疲れきり意気消沈し、おのれの敗北を強く予感しています。

これらの陰鬱な物語を書きつづけるポール・グレーヴズもまた凄惨きわまる体験の持ち主でした。彼がまだ13歳の少年だったころ、16歳の姉グウェンが長時間にわたる暴行・拷問を受け殺害されたのです。しかも犯罪はポールの目の前で行なわれました。ポールにはいつか自分は自殺するだろうという確信があります。

そんなポールの元に一風変わった依頼が寄せられます。半世紀前に16歳で変死した少女フェイ、その死の真相を推理し「物語」にするという依頼です。依頼主は裕福な老婦人アリソン・デイヴィス。かつてアリソンと死んだ少女フェイは「主従」関係を超えて親しい友人同士でした。フェイの母親の心に平和をもたらすため、というのが依頼主アリソンの言い分でした。

ポール・グレーヴズは老婦人アリソンの所有するロッジに泊り込み、調査・執筆を開始します。そして、同時期にアリソンの客となっていた女性脚本家エレナー・スターンと知り合い、親しみを増していきます。ポールは2つの「死」の真相の解明を進めていきます。50年前の少女の死と姉の死と・・・。

物語終盤ではそれぞれの「死」に関して驚愕の事実が明らかにされます。とはいえ、私(喜八)は途中で片方の「真相」に気づきました(もう、一方は分かりませんでした)。ただし、予測がついたからと言って恐怖の量は低減しませんでした。やはりこれは「打ちのめされるようなすごい」恐ろしい小説です。

自身が創り上げた登場人物「ポール・グレーヴズ」と同様、トマス・H・クックも凄惨な死にまつわる物語を書きつづけている作家です。クックの小説のほぼ総てが「打ちのめされるような」暗黒ミステリなのです。読者の誰しもが「おそらく・・・」と思っているでしょう。

そのクックの暗さに惹かれて翻訳されている作品の半分以上を読んでみました。その中では『死の記憶』にもっとも感銘を受けました。平和に穏やかに暮らしていた男が、ある日、妻と2人の子供(長女と長男)を射殺して(?)行方不明になる。ただ1人生き残った「次男」が悲劇の真相を探るというというストーリーです。この小説にも驚愕のラストが待ち構えています。

一時はクックの暗黒ミステリを憑かれたように読み耽った私ですが、いまはそれほどでもありません。それこそ「憑きが落ちた」ように「クックの暗黒世界」から離れました。理由は自分でもよく分かりません・・・。


(『夜の記憶』トマス・H・クック、文春文庫、2000)


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ハリー・ポッター第7巻 悪魔的な予想

『ハリー・ポッターと賢者の石』

ハリー・ポッター」シリーズの第7巻(完結編)のタイトルが『ハリー・ポッターと死の聖人』に決定したそうです(出版時期は未定)。

かねてより著者のJ・K・ローリングさんが「完結編では主な登場人物2人が死亡するだろう」と発言しているため、登場人物の誰が死ぬことになるのか、ファンのあいだで諸々の憶測が立てられています。

世の風潮に従って私(喜八)もハリー・ポッター第7巻の予測をしてみました。私の世界観を反映して到って暗い予測です。

■反ハッピーエンド
一般にイギリス作家のファンタジーはストーリーが進むごとに暗くなる傾向があります。『ナルニア』しかり『指輪物語』しかり。したがって『ハリー・ポッター』もハッピーエンドは望めないでしょう。私の予想では以下のような過程を経て「ハリー・ポッター・サーガ」は大団円を迎えます。

■ロンの死
第7巻の冒頭でロン・ウィーズリーが「戦死」します。ロンの殺害はハリーの目の前で実行されますが、犯人は分かりません(後に判明)。親友ロンの非業の死によりハリーは宿敵ヴォルデモートへの憎悪をさらに深めます。

■ハーマイオニーの正体
ハーマイオニー・グレンジャーは「死喰い人(Death Eater)」であることが判明します。魔法使いの世界で「穢れた血」と蔑まれ続けた彼女はひそかに強烈な復讐心を抱いていました。そこをヴォルデモートに突かれたのです。徹底的な能力主義者のヴォルデモートはマグル(人間)の両親から生まれたハーマイオニーをまったく差別しません。それどころかホグワーツ魔法魔術学校で抜群の成績をおさめるハーマイオニーに最大の評価を与え部下の中でも最上の地位を約束しました。こうしてハーマイオニー・グレンジャーはもっとも強力な「死喰い人」となりました。

■ハーマイオニーの戦い
ストーリーが進むうちにロン・ウィーズリーを殺害した犯人はハーマイオニーだと判明します。ロンを殺すことがヴォルデモートへの忠誠を証明する「試練」だったのです。さらにハーマイオニーはロンの妹ジニー・ウィーズリーを魔法で発狂に追い込みます。ジニーは聖マンゴ魔法疾患傷害病院で残りの長い生涯を過ごすことになります。

■ハリー対ハーマイオニー
ハリーとハーマイオニーは凄絶な死闘に突入します。その過程でハーマイオニーがジニーを発狂させたのは「嫉妬」が原因であったことが明らかにされます。ハーマイオニーは最初に会ったときからずっとハリーに恋心を抱いていました。しかし無神経なハリーはハーマイオニーの気持ちを無視し続けた。ハーマイオニーがヴォルデモートに篭絡されたのも、ハリーに原因があったとも言えるのです。

■ハーマイオニーの死
ついにハリーはハーマイオニーを倒します。ぼろぼろになったハーマイオニーはハリーの腕の中で息を引き取ります。彼女はずっとハリーを慕いつづけていたこと、ロンやジニーを手にかけたのは嫉妬が原因であったことを告白し許しを請います。そしてヴォルデモートがハリーの実父であるという衝撃の事実を明かします(言うまでもなく、これは「魔女の最後の一撃」です)。

■ヴォルデモートの正体
ハリーがずっと両親の敵として憎みつづけてきたヴォルデモートはハリーの実の父だったのです。これまで幾度となく好機があったにもかかわらず、ヴォルデモートがついにハリーを殺すことができなかったのは、自らの子であったためです。父と息子の命がけの争闘。これが「ハリー・ポッター・サーガ」の真の姿でした。

■ヴォルデモートとリリー・ポッター
ハリーの母リリーはかつてヴォルデモートと相思相愛の仲でした。そして一子ハリーを得たのですが、ヴォルデモートの正体に気づき離縁。これまでハリーが父と信じてきたジェームズ・ポッターはじつは養父だったのです。ジェームズはハリーがヴォルデモートの子であることを知りながら、自分の息子として育てました。ヴォルデモートは嫉妬による激情からリリーとジェームズの2人を手にかけてしまいます。しかし、ヴォルデモートが愛した女性はリリーだけだったので、魔王としての全盛期にも他の女性を妻(もしくは愛人)にすることはありませんでした。

■ハリーの苦悩
かつて大親友であったロンとハーマイオニーは死に、恋人ジニーは発狂してしまった。この悲劇の最大の原因はじつは自分自身にあったのだ。そして宿敵ヴォルデモートはなんと実の父だった! はたして父親を殺していいものだろうか? ハリーは苦悩します。ハリーの心の揺らぎを察知したヴォルデモートは父と息子の2人だけで対話することを提案します。ハリーは対話に応じます。

■ヴォルデモートとハリー
ヴォルデモートはおのれの「真意」をハリーに語ります。自分(ヴォルデモート)はけっして私利私欲から覇権を望んでいるわけではない。その証拠に自分はこれまで贅沢というものをしたことがない。すべてを闘争のために捧げ、ほかの誰も真似ができないような禁欲生活を続けてきた。世の中のほぼすべての者、魔法使いもマグルも弱々しい愚者にすぎない。彼らが理解できるのは「剥き出しの力」だけだ。論理も言葉も世の多数者には届かない。愚者たちに正しい生き方をさせるには、絶対的武力(魔法力)で統治する以外の方法はない。

■ヴォルデモートの提案
ヴォルデモートはさらに驚くべき提案をハリーにします。避けられぬ運命により我々親子は敵となり、さらにはどちらが死ななければならないと定められている。しかし、生涯で唯一愛した女性リリーとの間に生まれたハリーを倒すことは自分(ヴォルデモート)にはできない。先にも言ったように自分に私利私欲はない。魔法でおのれを消滅させ、持っている力のすべてをハリーに与えよう。つまりヴォルデモートをハリーに吸収させ新しい人格を誕生させるのだ。

■魔王誕生
ハリーは逡巡を重ねますが、最終的にヴォルデモートの提案を受け入れます。ヴォルデモートが絶対悪であるという確信がもてなくなったからです。ハーマイオニーとの戦いを通じて自らの側にも「悪」のあることを理解したハリーには父ヴォルデモートを憎みきることが不可能になっていました。こうして新たな「闇の帝王(Dark Lord)」が誕生します。ヴォルデモートより遥かに強大な闇の魔法使いハリー・リドル・ポッター(仮名)の出現により魔法界およびマグル界は「大変革と大虐殺」の時代を迎えることになります。それは多くの魔法使いとマグルにとって終わりのない悪夢の始まりでした。

■新たなサーガ
こうしてハリー・ポッター・サーガは第7巻で終了します。が、物語はまだまだ続きます。暗黒の帝王ハリー・リドル・ポッターが君臨し、帝国にとって役に立たない者、魔王に従わない者は容赦なく粛清される恐怖政治。あらゆる希望は失われ、人々は自ら考えることを放棄し、帝王ハリーに隷従するようになる。しかし、少数ながら自由を求めての戦いを続ける勇者たちもいました。第8巻以降は、ネビル・ロングボトムルーナ・ラブグッドルビウス・ハグリッドリーマス・ルーピンなど、かつてハリーと親しい関係にあった者たちがレジスタンス活動を開始。ここから新たな物語が展開していきます。彼ら彼女らは魔王ハリーを倒し、自由を取り戻すことができるのでしょうか・・・。


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『あくたれラルフ』

『あくたれラルフ』:セイラの人形をこわすラルフ猫のあくたれラルフは身体が赤くて大きい。
飼い主の少女セイラ(小学校低学年くらい?)よりもまだ大きい。
さらにラルフは目つきが悪くて行ないが悪い(悪過ぎる!)。
日頃の悪行が祟《たた》って、サーカスでこき使われ、さらには路地裏のホームレス猫になるなど、ラルフは大変な思いをします。でも、最後は一家の結束も強くなりメデタシメデタシで終わるお話です。

絵本『あくたれラルフ』の原題は「Rotten Ralph」。
アメリカの児童文学者ジャック・ガントスJack Gantos)が文章を、イラストレーターのニコール・ルーベルNicole Rubel)が作画を担当しています。これが彼らの第1作でした。運良く大ヒットとなり本国アメリカでは合わせて10冊以上が刊行される人気シリーズとなっています。日本では『あくたれラルフ』のみ翻訳刊行されていますが、ぜひ続編もだしていただきたいところです。

イギリスではテレビアニメ化されてもいます(1999~2001放映)。日本でもNHKBS放送で『いたずらネコ ラルフ』という題で放送されたことがあります(2001~2003)。「ストップフレーム・アニメーション」という非常に手間のかかる技法をつかって作製されているようです。

「rotten」の英語の意味は「infoseek マルチ辞書」によると「腐敗した; もろい; 〔話〕 悪い, 汚い」。実際のところ、かなり強い表現のようです。「あくたれ」という表現よりは、「ならずものラルフ」のほうが合っているかもしれませんね。

セイラと両親とラルフの一家がでかけたサーカスで、ラルフの隣の席にいた犬がほえ続けてラルフをイライラさせます。これが発端となり大騒動が巻き起こります・・・。この犬はストーリーの後段でもう一度登場します(背景の一部に隠し絵のように姿を見せるだけですが)。お騒がせ犬の姿を探してみるのも面白いでしょう。

ところで改心した(?)ラルフはなぜお母さんが「えびの ごちそう」をつくったときだけ、再びあくたれてしまうのでしょうか。この意味がよく分かりませんでした。ご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけないでしょうか?



(『あくたれラルフ』ジャック・ガントス、童話館、1995)


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喜八

Author:喜八
メールを送るkihachin7@gmail.com

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