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『ウルトラヴァイオレット』

『ウルトラヴァイオレット』

ウルトラヴァイオレット(原題:Ultraviolet)』カート・ウィマー監督(2006)について。

ストーリー》21世紀末、人類は「超兵士」をつくろうとする試みに失敗し、新種のウイルスが蔓延することとなった。このウイルスに感染した者たち「ファージ」はバンパイアのような超人的な身体能力・知力を得るが、差別と排除の対象となる。

人類より「強い」存在であるファージに危機感を抱いた人間社会は、彼ら彼女らの絶滅に乗り出す。もちろん、ファージも黙って殺されるわけではなく、地下組織を結成して反撃を開始する。人間対ファージの激闘が続く。

やがて、人間側はファージを絶滅するための「最終兵器」の開発に成功する。その情報を得たファージ側は最強の戦士であるヴァイオレットミラ・ジョヴォヴィッチ)を敵の本拠地に送り込む。絶対不可能とも思える任務を、たった1人で完遂したヴァイオレット。だが、「最終兵器」が9歳の少年シックスであったことを知った彼女は、ファージと人間の両方を敵とする戦いに身を投じることとなる・・・。

感想》ただもうひたすら強い、というより「無敵」なヴァイオレットの「大殺陣」を鑑賞するための映画です。ミラ・ジョヴォヴィッチ・ファンなら、背筋をぞくぞくしながら楽しめるでしょう。私(喜八)はまさしくミラ・ジョヴォヴィッチ・ファンなので、たっぷりと楽しめました。

ヴァイオレット=ミラ・ジョヴォヴィッチは「Gun Kata」と呼ばれる(架空の)格闘技の達人です。「Gun Kata」とは統計解析と射撃を高度に組み合わせた格闘術となっているらしく、ヴァイオレットは圧倒的多数の敵による銃撃に曝《さら》されても、弾を避けてしまい(!)、一瞬にして敵を倒してしまうのです(バカバカしいと言ってしまえば、それまでですが・・・)。

なお、『ウルトラヴァイオレット』は名匠ジョン・カサヴェテス監督が妻のジーナ・ローランズを主役として撮った『グロリア(原題:Gloria)』(1980)のオマージュだそうです。たしかに「無敵」で矢鱈に格好いい女性が銃をぶっぱなしまくるという展開はそっくりです(ヴァイオレットはさらにカタナで敵を斬りまくる!)。

ミラ・ジョヴォヴィッチは『バイオハザード』第一作のころと比べると、かなり身体を絞ったという印象です。『バイオハザード』では「スーパーモデル出身というわりには肉付きがいい。太股がむっちりしているし、お尻は後ろから写さないようにしているのかな?」と思ったのですが、『ウルトラヴァイオレット』ではぴったりした衣装につつまれたお尻を強調するカットが多いように感じました。

しばらく前に鑑賞したシャーリーズ・セロン主演のSF映画『イーオン・フラックス』カリン・クサマ監督 (2005) と共通点が多い、とも感じました。「無敵」の女性戦士が縦横無尽に暴れまくるという構図はそっくりです。未来世界の設定や描写にも似通ったものがあります。一言でいえばレイ・ブラッドベリの小説をフランソワ・トリュフォーが映画化した『華氏451』風の未来社会です。

ミラ・ジョヴォヴィッチとシャーリーズ・セロンはどちらも大好きな女優さんですが、『ウルトラヴァイオレット』と『イーオン・フラックス』では前者に一票を投じたいと思います。


(『ウルトラヴァイオレット』カート・ウィマー監督、2006)


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『ギャザリング』

『ギャザリング』

映画『ギャザリング(原題:The Gathering)』ブライアン・ギルバート監督(2002)について。

ストーリーアーサー王伝説とロック・フェスティバルで有名なイングランド南西部サマセット州グラストンベリーGlastonbury)の丘陵で2人の若者が惨死する。地下の古代教会跡に転落するという不幸な事故だった。この教会はキリスト像が背後を向くという顕著な特徴をもっていた。紀元1世紀に創設された後、中世の黒死病(ペスト)流行時に人の手により埋められたものらしい。

地下教会の遺跡が調査されつつあるころ、アメリカからの旅行者とみられる若い女性キャシー・グラントクリスティーナ・リッチ)がグラストンベリーで交通事故に遭う。自動車に跳ね飛ばされ死亡しても不思議のない状況下、奇跡的にキャシーは軽症だった。しかし彼女は記憶を失っていた。

交通事故の加害者となったカークマン一家の住むライム・コート(Lime Court)にキャシーは一時滞在することになる。ここはかつて虐待された子供たちのための施設であった歴史をもつ古い屋敷だ。

カークマン家の2人の子供たち(マイケルエマ)と親しくなったキャシーは、ライム・コートでの生活を楽しむようになる。が、不思議な幻覚をたびたび見るようにもなってゆく。幻覚はマイケルの運命と密接な関係があるらしい。

それと同時に灰色の服を身につけた奇妙な男女(Gathering)がグラストンベリーの街に現れ、キャシーにつきまとうようになる。何か忌まわしいことが起きるらしいという予感が強まるなか、キャシーはマイケルを守り抜くことを誓う・・・。

感想》主演のクリスティーナ・リッチに尽きます。クリスティーナ・リッチのファンなら彼女の存在感ある演技を満喫できるでしょう。そうでなければ「いまひとつ物足りない映画」となるかもしれません。

私がクリスティーナ・リッチに最初に注目したのは『アダムス・ファミリー(原題:The Addams Family)』バリー・ソネンフェルド監督(1991)でした。モンスター一家の小学生の長女ウェンズデー役。いまなら「ゴスロリ」と表現されるかもしれない古風な黒服、真っ白な顔に黒髪の少女には不思議な魅力がありました。

その後『キャスパー(原題:Casper)』ブラッド・シルバーリング監督(1995)のキャット役で再会。「大きくなったな〜」と思いました。まるで久し振りに会った親戚の少女を見ているような感覚です(笑)。『アダムス・ファミリー』でも『キャスパー』でも「ちょっと(かなり?)変わっているけれど可愛い女の子」役がぴったりでした。

その後のクリスティーナは『スリーピー・ホロウ』『アイス・ストーム』『私は「うつ依存症」の女』と快進撃を続けると同時に、子役から大人の女優への脱皮に成功しました。現在ではハリウッド若手俳優のなかでも独特のポジションを占める実力派女優と目されているようです(ただし本格的に演技の勉強をしたことはないのだとか)。

ギャザリング』でのクリスティーナ・リッチは顔の線が鋭角的になり「大人になったなあ」という印象です。小柄ではあるけれど体格はよくて「筋力が強そう!」とも思いました。特典映像のインタビューでは撮影中に共演のヨアン・グリフィズと一緒にジムに行ったという発言もありました。

劇中、サイモン・カークマン(マイケルとエマの父親)とルーク司祭の会話に「アリマタヤのヨセフ」とでてくるのは実在した人物です。キリスト処刑後に総督ピラトに願ってキリストの遺体を引き取り埋葬したと聖書に記述されています。

イングランドの古い伝説ではアリマタヤのヨセフはキリスト処刑直後にキリストを貫いた聖槍を持ってブリタニアに渡ったとされているようです。この聖槍は「ロンギヌスの槍」とも呼ばれています。ロールプレイングゲームでは「ロンギヌスの槍」は強力なアイテムとしてたびたび登場しますから、名前に聞き覚えのある方も少なくないでしょう。

映画『ギャザリング』では記憶喪失の主人公キャシーとは何者か? という謎もストーリーの軸のひとつになっています。以下に伏線となっている部分を指摘しておきます(キーボード操作「Ctrl + A」で「すべてを選択」として、画面を暗転させることにより読むことができます)。

■ 以下ややネタバレです ■


  • 救急病院の場面、ストレッチャーで搬送中のキャシーの手の動き。

  • キャシーは紹介される前からマイケルとエマの名前を知っていた。




(『ギャザリング』ブライアン・ギルバート監督、2002))

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『ディセント』

『ディセント』

ディセント(原題:The Descent)』ニール・マーシャル監督(2005)

ストーリー》女性6人のグループが、アメリカ合州国アパラチア山脈奥地の洞窟探検(ケイビング、Caving)を試みる。そこは既に多くの愛好家たちによって歩き尽くされた、いわば「観光名所」のような場所であるはずだった。しかし、メンバーの1人の意図的な「誤導」により、一行は未知の洞窟へと足を踏み入れることになる。

地下深くを行く途中、突然、落盤事故が発生する。6人の女性は孤立してしまう。彼女らがこの未知の洞窟に入ったことを知る者は誰もいない。もう、進むしか選択肢はなくなった。けれども、闇の奥には彼女らには想像もつかない「脅威」が待ち受けていた・・・。

感想》「これはこれで悪くない」と思いました。主人公たちが地下に棲息する異形の生物により襲われるというストーリーは、ひとつ間違えれば極度に陳腐なものに成り果てかねませんが、『ディセント』では(いちおう)成功しています。

低予算ホラーには有り勝ちな「暗闇をライティングで表現する」手法が、それなりに功を奏しています。他のホラー映画で夜の場面を延々と「闇と光」のコントラストで見せられたりすると「いい加減にしてくれ!」と思うことが多いのですが、この映画の場合そういう気分にはなりませんでした。おそらく「地下深い洞窟」という設定になっているためでしょう。

「ケイビング」「ロッククライミング(岩壁登攀)」などの描写や小道具が物珍しく、観客を飽きさせないという面もあるかもしれません。また、私(喜八)には閉所恐怖症の気があるので、その意味でも恐怖はいや増すばかりでした。這ってようやく前進できるような狭い洞窟を行く場面は良くできています。

ただし、手放しで誉められる「傑作」というわけでもありません。私が苦痛に感じたのは、登場する6人の女性たちの個性が立っていないこと。暗闇の場面では「誰が誰だか分からない」ことが多くて、ちょっとイライラします。また、洞窟に入る前夜、6人がロッジで飲み明かすというシークエンスも冗長な印象です。

ラストシーンは、先に鑑賞した『サイレントヒル』に相通ずるものがありました(「母と娘」というテーマです)。ラストに関しても「これはこれで悪くない」と思いました。


(『ディセント』ニール・マーシャル監督、2005)


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『戦革機銃隊1945』

『戦革機銃隊1945』

映画『戦革機銃隊1945(原題:Straight Into Darkness)』ジェフ・バー監督(2005)について。

ストーリー》1945年、第二次世界大戦末期の西ヨーロッパ戦線。2人の脱走米兵がフランス領内をさ迷い歩いていた。爆撃による廃墟、死んだ家畜をむさぼる野良犬たち、ドイツ兵の死体、絞首刑にされた民間人たち、気の狂った人食い神父、雪の積もる森といった荒涼とした光景が続く。

とある廃墟に身を潜めた脱走米兵の2人は、奇妙な集団によって囚《とら》われてしまう。老齢の男と初老の女、そして障害がある子供たち(写真)で構成されたレジスタンス・グループだった。ドイツ軍の爆撃により寄宿学校を破壊された彼ら彼女らは、自《みずか》ら武器をとってドイツ兵との戦闘を続けていたのだ。

そこにドイツ軍部隊が現れる。戦車1台と歩兵60名。ドイツ軍指揮官は、廃墟に立てこもった脱走米兵とレジスタンスたちに降伏を呼びかける。しかし、老人・子供・米兵は「敵」との戦闘を選択する。最初は善戦するものの、兵力には差がありすぎた。凄惨な戦いの中で次々とたおれる子供たち・・・。

感想》奇妙な魅力に満ちた戦争(反戦)映画です。個人的には「心に残る作品」でした。

米兵2人が脱走した戦場はおそらく「バルジの戦い」でしょう。1944年12月、フランス・ベルギー国境地帯の雪深いアルデンヌの森で、ドイツ軍が最後の反攻作戦を展開し一時は優位に立ちましたが、後に連合軍の反撃により独軍は敗走。映画登場人物の米兵たちはドイツ側が優勢だったときに脱走したのだろうと私(喜八)は推測しました。

さ迷い歩く脱走兵たちが、とある森の中で絞首刑にされた民間人たちの遺体と邂逅する場面があります。最初は「ドイツ軍に虐殺されたフランス人」と思ったのですが、これは違うかもしれません。1945年01月の時点ではフランス全土はすでに「解放」されているはずですから。殺された人々は「対独協力者」としてフランス人同胞によりリンチされた、という設定なのかもしれません。

主人公たちと戦闘を交わすドイツ軍部隊指揮官が「たぶん、フランスが勝ったことも知らない間抜なパルチザンなんだろう」とつぶやく場面があります。このドイツ兵らは「バルジの戦い」で敗れ、本国ドイツに敗走する途中にあるのだと考えられます。彼らは「ある事情」で、この廃墟に立ち寄る必要があったのです。レジスタンスたちが廃墟を立ち去れば、両者は戦う必要などありませんでした・・・。

少年少女を率いる老人ディーコンを演じるのはベテラン俳優デヴィッド・ワーナー。個人的には、サム・ペキンパー監督作品『砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード』『わらの犬』『戦争のはらわた』などでお馴染みの俳優です。そのためか、今回鑑賞した『戦革機銃隊1945』と『戦争のはらわた』の2本の映画にはどこか似たところがあると感じます。凄絶な戦闘を描きながら戦争の虚しさを描き出す「反戦映画」であるところが共通しているのでしょう。

ところで『戦革機銃隊1945』という邦題は有名なアニメ映画のもじりのようですね。映画の内容とはまったく合っていません。「ずいぶん投げやりなタイトルをつけたな」と思います。


(『戦革機銃隊1945』ジェフ・バー監督、2005)

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『スリーピー・ホロウ』

『スリーピー・ホロウ』

映画『スリーピー・ホロウ(原題:Sleepy Hollow)』ティム・バートン監督(1999)について。

ストーリーワシントン・アーヴィングの小説『スリーピー・ホロウの伝説』(南雲堂)を映画化。1799年、ニューヨーク近郊の町スリーピー・ホロウで、謎の首なし騎士による連続殺人事件が発生。主人公の警察官イカボッド・クレーンジョニー・デップ)は持ち前の正義感から上司に反抗的な態度をとったため、厄介な殺人事件をたった1人で担当することになってしまいます。

イカボッド捜査官は、科学的な捜査手法を取り入れている一方、劇中6回も気絶するほど臆病で頼りない男性です。危険が迫る場面では少女カトリーナクリスティーナ・リッチ)やマスバス(マーク・ピッカーリング)少年の後ろに隠れることまでします。が、その少女・少年の助けもあってイカボッドは事件の真相に迫ってゆきます・・・。

感想》劇中、オランダ人入植者の村として言及されているスリーピー・ホロウ。我こそはその「本家本元」であると主張する地域は複数存在し、それぞれが観光地として知られているようです。もっともニューヨークそのものが当初はオランダ人移民が入植し、19世紀まではオランダ文化が席巻していた土地なのです。カメオ出演でニューヨーク市長役を名優クリストファー・リーが演じていますが、この役名が「Burgomaster」。 オランダ・ドイツなどにおける「市長」という意味です。

風景・大道具・衣装が綺麗だなあと思って観ていましたら、この作品『スリーピー・ホロウ』は1999年のアカデミー美術賞を受賞していたのでした。落ち着いた淡い色彩の画面の中で血の色の赤だけが鮮やかなスプラッタ調です。

怪優(?)クリストファー・ウォーケン演ずる首なし騎士(The Hessian Horseman)の殺戮は容赦がなく、女性や子供でさえ、いとも簡単に首を切り落とされてしまいます。「IMDb」の記述によると、この映画では合計18回もの斬首が行なわれるのだそうです。

劇の終盤では、巨大な風車小屋でのイカボットたちと首なし騎士の活劇、それに続く馬車と騎士の追跡行、不気味な「死人の木」でのクライマックスと息もつかせぬテンポに魅了されました。快作の多いティム・バートン監督作品の中でも出色のできばえと言っていいでしょう。

言ってみれば「大量殺戮スプラッタ・ホラー」の『スリーピー・ホロウ』ですが、意外に爽やかな映画に仕上がっています。ジョニー・デップの飄々《ひょうひょう》として繊細な持ち味が最大限に生かされているためと、助手役の少年少女カトリーナとマスバスが魅力的に描かれているためでしょう。雪のニューヨークのラストシーンも後味がよいものでした。


(『スリーピー・ホロウ』ティム・バートン監督、1999)

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『かもめ食堂』

『かもめ食堂』

映画『かもめ食堂荻上直子監督(2006)について。

ストーリーフィンランドの首都ヘルシンキで食堂を経営するサチエ小林聡美)。目を瞑って世界地図を指差し、たまたま指の先が行ったフィンランドに来たミドリ片桐はいり)。身体が弱かった両親の介護を終えて旅行にでたマサコもたいまさこ)の3人が織り成す物語。フィンランドの人たち ─日本贔屓の青年、夫に去られ傷心の中年女性、コーヒー好きの謎の中年男、口さがないオババたち─ との交流など、淡々と「かもめ食堂」の日常が描かれます。

感想》なんと言っても小林聡美さんのたたずまいが美しい! そして、片桐はいりさんともたいまさこさんが実にチャーミングです。鑑賞中「素晴らしい監督の腕前だ」と感心することしきりでした。映画を観終った後にネットで調べて、まだ若い女性監督の作品であることを知り驚きました。

小林聡美さんのことは『転校生大林宣彦監督(1982)のころから知っていました。小林聡美さんは十代のころから大変に「上手い」女優さんでした。が、私(喜八)は正直にいって小林さんが嫌いでした。上手すぎて嫌味に感じてしまうのが理由だったと思います。

ところが、2003年に日本テレビ系で放映されたドラマ「すいか」をたまたま観て、小林聡美さんが上手いだけでなく、非常な存在感のある演技者であることを再発見したのです。そして、にわかに小林聡美ファンとなってしまいました。

映画『かもめ食堂』の小林聡美さんは登場する総ての場面で「絵になっています」。ふきんでテーブルを拭く、包丁でトンカツを切る、コーヒーを淹れる、プールで平泳ぎ、合気道の「膝行」をする。それらの総てにおいて美しい。これは大変なことだとつくづく思います。

片桐はいりさんも素晴らしい。日本贔屓のフィンランド青年、トンミ・ヒルトネンから「僕の名前を漢字で書いてください」と頼まれ「豚身昼斗念」と書く。ヨガのポーズ「咲いたばかりの蓮《はす》の花」でのけぞる。サチエから「父とおにぎり」の話を聞いてホロッとする。この人も存在感があって実に上手い女優さんだと思う。

もたいまさこさん。快演にして怪演です。映画に重みと(あえていえば)ホラー味を添加しています。鑑賞後に「もしかしたら、もたいまさこさん演ずるところの《マサコ》は、この世の存在ではないのかもしれない」と思い至りました。なんとも不思議な味わいをかもし出しています。ちなみにもたいまさこさんは荻上直子監督作品の常連メンバーだそうです。

調理・食事・掃除・挨拶・買い物など日常の何でもないような動作に秘められた「美」を的確に切り取って見せた映画。観終った後にとても豊かな気持ちになれる作品でした。そして「もし、明日地球が消滅することになったら、自分は誰といっしょにご飯を食べたいのだろう?」ということを考え込んでしまいました・・・。

『かもめ食堂』


(『かもめ食堂』荻上直子監督、2006)


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